MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 猫を殺す言葉あなたがわたしにくれたもの異三郎と信女。
550訓によせて ------------------------------------ 髪を、伸ばす気などなかった。それは彼を苦しめるだけだと思ったから。あの不器用で仏頂面で優しくてそこぬけに馬鹿な男は、娘の仇にそれでも娘の面影を見つけてしまうと思ったから。 私は道具に徹するつもりだった。元よりそれ以外の生き方など知りはしないからそれは当然で、彼も当然道具として扱いだろうと思っていた。 なのに。 「おや、結構伸びてきましたねぇ。今度私の行きつけの床屋へいきましょう。何、心配はいりません。以前は城中で姫様の御髪も整えていた、エリート中のエリート理髪師ですからね。何も言わずとも、エリートに相応しい髪形に仕上げてくれますよ」 縁側に並んで腰掛け、ザンバラの髪を鼈甲の櫛で梳きながら彼は笑った。 それは黄昏時の夕陽のように暖かくて寂しくて、すぐに消え溶けてしまったから、私は何も言えなくなった。 私は貴方の娘じゃない。その一言がどうしても言えなかった。私の中に娘を見ているだろう彼を傷つけたくなかったのか、当然でしょうと言われて私が傷つきたくなかったのかは、もうわからない。 結局、髪は長さを保ったまま綺麗に切り揃えられ、手入れされた。 彼も髪を切っていた。隙なく結われた髷を落とし、似合いますかと笑ってみせた。 彼が心の中でまた一つ、何かを捨てたのだと知った。 耳元でサラサラ音を立てるほど艶めいた髪を見て、彼はお姫様みたいですねとまた笑い、私の頭をぽんと撫でた。 何もかもをなくした彼は、いつしか何もかもを奪った私の前でだけ笑うようになっていた。 私は髪を切れなくなった。 私はそれを、私に与えられたものだとは思わなかった。優しく頭を撫でる手も鼈甲の櫛も髪がサラサラになるシャンプーも、文字の手習いも行儀作法の煩い小言も舶来の甘い菓子も、全て『あの子』が貰うべきものだった。でも『あの子』はいなくなってしまったから、仕方なく人形の自分に注がれているだけなのだと思っていた。思わなくてはならないと思い続けた。 けれど。 『信女さん』 どこかに沁みる、低い声。 『信女さん、会議終わったんですが……もしかして寝てます?』 呆れ混じりの、優しい声。 『起きて下さい信女さん、帰りますよ』 愛おしむような、彼の声。 『信女さん』 私の名を呼ぶ、貴方の声。 ねぇ異三郎。 おとうさん。 それは私のものだったのだと、私がもらったものなのだと、思って生きてもいいですか。 やとひじ44号ネタバレかもしれない捏造妄想モブ夜兎×土方
本番ありませんが凌辱風味注意。賞味期限は来週まで。つじつまなんで知らない そらち先生いつも生きる糧をありがとうございます ----------------------------------------------------- つづきはこちら bitter chocolate for you銀魂一番くじPVネタ
---------------------------------- 「ん、う……?」 背後からきつく抱きしめる腕の感触に、ふと目が覚めた。 今時珍しい枕元の蝋燭行燈にほのかに浮かび上がった見覚えのない和室の光景に、一瞬自分がどこにいるのか分からなくて身じろげれば、後ろから巻きつく熱い腕の力が強くなる。 刹那ふわりと漂った甘い匂いに、土方は一拍遅れて状況を思い出した。 そうだ、今日は世に言うバレンタインで。そんな日に、何故かこの男と仕事が重なった。何故警察と自営業が同じ仕事にブッキングするのかは考えないことにする。世の中には色々な事情があるものなのだ。 ともかくわけのわからない仕事はどうにか終わり、そのままどちらともなく連れ立って、粉雪の舞う街へと繰り出し酒を飲んで宿へと入った。 いい年をした男同士、それも自分とこの男だ。お互いチョコなんて用意できるはずもなく、あえて話題に乗せることもなかったが、菓子業界の陰謀に踊らされたそのイベントを意識しているのは分かっていた。 少なくとも自分は、特別な恋人と過ごすというこの日に、糖尿寸前の白髪天パが他の誰でもなく自分を抱きしめ寝息を立てていることにこの上なく満足している。 している、はずだ。 刹那、チリ、と胸の奥に疾走った痛みを誤魔化すように、土方は寝返りを打った。すれば、鼻先が触れ合う程近くで幸せそうに眠っている男の寝顔が、行燈の薄明かりに浮かんで見える。 外はまだ雪が降っているのだろうか。世界は酷く静かで、まるで自分達以外いなくなったようだと思って、そんなことを考えた己を思わず笑った。 自分もこの男も、互い以上に大切で譲れないものがあるくせに。いなくなってしまったら、生きていけないくせに。 「んっ……」 布団の中で背伸びするように身じろいで、薄く開いた男の唇へ口付ける。触れるだけのつもりだったけれど、甘く感じるそれに誘われるように舌を這わせ、歯列の合間から咥内へと忍ばせた。 「は、んっ……ふ……」 温かい口腔の感触が気持ちよくて、相手が寝ていることも忘れ、つい夢中で貪ってしまう。すれば唐突に、至近距離で見つめていた瞳が揺れて。 「……っげほっ!にっげええっ!?」 恋人と口付けた開口一番にしては失礼にすぎる台詞と共に、男がバチリと目を見開いた。驚愕に染まった柘榴色の瞳がパチパチ瞬いて、土方の視線と合わされる。 「……ちょ、おまっ、何してくれんのおおおおっ!折角チョコレートの海で泳ぐ夢見てたのに!口ん中滅茶苦茶ニコチン臭ぇし苦いんですけどおおおおっ!!」 ようやく状況を理解したらしい男が怒声を上げる。 もっとも、それが不意打ちされた照れ隠しであることは、薄明かりでもはっきり分かるほど赤く染まった顔と、息が詰まるほどきつく抱きしめられた腕の力で明らかだったが。 そんな男を見やって、土方はくつりと笑った。そうか、苦いか。 「―――…ならおあいこだな、ざまぁ見ろ」 「へ?」 思いもよらず見てしまった、見られるはずのなかった子供時分の男の姿。 決して触れられない青写真の向こう側の光景に、どうしようもなく苦い何かを感じたことは、墓の中まで持っていく秘密にしようと思って、土方は上機嫌に笑ったまま再び男へ口付けた。 ご利用は計画的に |
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