MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ご利用は計画的に本誌51号・52号ネタバレっぽいです。
「ちくしょう、えらい目にあった……」 外見は坂田銀時、中身は土方十四郎は、鋒鋩の態で万事屋へと帰りつき、ドサリとソファへ腰掛けた。そうして見下ろす己の姿は、普段の黒い隊服でも着流しでもなく、間違った和洋折衷の白黒だ。最もそれも、先刻二人の子供達に屋上で散々暴行されたせいで、ズタボロになっていたが。 傍から見ていたときは、有り得ない奇妙な格好だと思っていたが、いざ自分が着てみると―――…ますます訳が分からない。 なんで洋服の上から着流し羽織る必要があるんだ。そして何故わざわざ片袖脱ぐんだしかもこの肌寒い季節に。 いっそばっさり脱いでしまうか、あるいは右袖をちゃんと合わせたい。だが、年中このスタイルなのだから急に変えれば怪しまれるかもしれない。改めて、あの男がジャンプ主人公であることを土方は天に呪った。ついでに、魂が入れ変わるなんて二次創作の定番ネタを、連載9年目にしてやらかした編集部にも呪いをかけた。 が、古い木目の天井に向かってどれだけ罵倒を唾棄しても、自体が解決するはずもない。むしろ、屯所では有り得ない年季の入った天井に、ますます気がめいるだけだった。 「……よりにもよって、こんな形でここへ来るハメになるたぁな」 ぽつりと呟いた声は、誰もいない室内に砕けて消えた。 二人と一匹の従業員は、散々銀時(中身土方)をボコったことで一応溜飲を下げたのか、自分を置いてさっさと立ち去った。てっきり先に帰っているかと思ったのだが、まだ戻ってきてはいないらしいのは純粋に有難かった。 何せこちらは、元に戻るまでの間、『坂田銀時』として生活しなければならないのだ。銀時の身辺について、最低限把握しておく必要がある。自分の家のトイレも分かりません、では、勘のいい子供たちに一日と持たず気付かれるだろう。 最も、冷静に考えれば入れ替わったことを周囲に隠しておく必要は特にないはずなのだが、あのときつい、『それぞれをして生活する』と提案してしまったのは―――… 「ってああああヤメだヤメ!!」 今はんなこと考えてる場合じゃねぇ!と、うっかりあらぬ方向へ飛びかけた思考を打ち切るように、土方は立ち上がりわしゃわしゃと頭を掻き毟った。だが、自分のものとは違うふわふわした天パの感触が指に絡まり、今度こそドクンと大きく鼓動が跳ねる。ついでに、目の端に晒された太く逞しい右腕にも。 「あ……」 入れ替わったことに気付いてからこちら、ずっとあの男と一緒にいたから、必死に意識しないようにしていた事実が、一人になった今、麻酔が切れたかのように土方の身の内を侵していく。 やはりこれは、この身体は、まぎれもなくあの男のものなのだ。 ドクドクドクと、心臓が急激に早鐘を打ち始める。頬が、耳が、熱くなっていくのが自分でもはっきり分かる。 これはいよいよもってマズいと、土方は頭を振った。きっと今鏡を見たら、顔を林檎のように赤くした坂田銀時の姿が映っているのだろう。そんなものを見てしまったら、その時点で自分は終わりだ。 気色悪いから、ではない。寧ろ逆だ。自分はこの男に、この身体の持ち主に、惚れているから。 だから、ほんの少しの間だけでも、この男として暮らし、この男のことを知ってみたかった、なんて。 「言えるかあああああああっ!!」 結局あらぬ方向まで飛んでしまった思考に、土方は手近にあった机をガッシャアアアアンと引っくり返した。机上に置かれた唯一の備品である黒電話が床に転がり落ちて、引き出しが飛び出し中身が向こう側に散乱する音がする。 ゼイゼイと肩で息をしながら、土方はその惨状を目の当たりにしてハタと我を取り戻した。 「……に、やってんだ、俺ぁ」 仮にも真選組の副長である自分の中身が、実はあのちゃらんぽらんな男ですなんて、シャレにならない。一刻も早く戻らなければ、実家がどうなるか分からない。 それでも、もし入れ替わったのが銀時以外であったなら、自分は一も二もなく近藤や仲間達に事情を明かしていただろうから、結局あの男のことを腹の底で信用しているのだろうが。 甚だ遺憾ながら、あの男の剣の腕とここ一番での判断力、行動力、そして指揮力は土方も認めている。デスクワークに関しては全く期待できないが、幸か不幸か急ぎのものは昨日までにあらかた片付けてしまっていた。 これでもし、差し迫った事件でも抱えていれば、『立場を隠して入れ替わり生活する』なんて馬鹿な誘惑に負けることもなかっただろうに。 チっと舌打ちし、土方は気を取り直して周囲を見回した。とにかく今は、状況を把握し、少しでも情報が欲しい。そしてこの男として暮らす以上、まずは二人の従業員を懐に引き入れなければならない。となれば、もっとも効果的かつ手っ取り早いのは。 「―――…金か」 恋する男から真選組の頭脳に戻った土方が呟きながら、引っくり返した机を元へと戻す。すれば、鉛筆やらメモ帳やら飴玉やらが散らばった床の上に、通帳が落ちているのに気が付いた。 ほんの一瞬罪悪感が沸き上がるが、今は自分が『坂田銀時』だ。見て何が悪いと己に言い聞かせながらそれを拾い上げ、適当にペラペラと中身を捲って。そして、そっとそれを戻した机の上へ置き、床に転がったままの黒電話を拾い上げ、暗記している番号をジーコジーコと気長く回し、数コール分待って。 『はいこちら万事屋銀ちゃ……じゃねぇ、えーと、チンピラ警察二十四時でえっす。本日の営業はー』 「二十四時間だっつったハナから終了してんじゃねええええっ!!っつーか誰がチンピラ警察だテメェ!!」 『……あ、もしかして多串くん?じゃなかった、えーと、イケメンヤリ手経営者の坂田さん?』 うわー、自分の声って電話越しだと超ビミョー、と辟易したようにのたまう土方(中身銀時)に、銀時(中身土方)はビキリと額へ青筋を浮かべた。 「テメーこそ、その声で坂田さんとかのたまってんじゃねェ気色悪ィ切腹しろ!つかもう屯所戻ってんのか、今何してやがる、何か問題起こしてねェだろうな!?」 『うるせーな付き合った途端束縛してくる彼女ですかオメーは。こちとらいきなりドエス王子に殺されかかって死にそうだったんだっつーの。お宅部下にどんな教育してるんですかぁ?』 「そっくりそのままこっちの台詞だそりゃあ!てめーこそあのガキ共にっ……!」 そこまで一気にまくしたて、土方ははたと我に返った。そうだ、今はこの男との他愛ない口論を楽しんでいる場合ではなくて。 「……っおい、今俺の部屋にいるなら、引き出しの上から二段目開けてみろ。そこに俺の通帳が入ってるはずだ。そっから百万程てめーの口座に振り込んどけ」 『は…?おま、いきなり何言っ』 「暗証番号は1046だ。……まさかと思うが、滞納してる給料と家賃、百万じゃ足りねぇなんぞと言わねーだろうな?」 『……いや、いやいやいやいや何言ってるの多串くん!何、まさか本気で払う気なの!?俺の負債を!?てか暗証番号短絡的すぎね!?え、馬鹿なの死ぬの!?』 「ああテメーの通帳見た瞬間この身体今すぐミンチにしてやりたくなったわ!なんっだこの残高!!あれじゃ煙草も買えねーだろうが!!ついでにこれから原因調べんのにも、給料払わねぇとあいつら協力どころか今度こそ殺しかねねぇし!甚だ不本意だが、一旦建て替えといてやる!!」 バシンと通帳を叩きつけながら怒鳴ったものの、正直この中身の残高が200円を切っている男から振り込んだ金を回収できるとは思っていない。それでもいいかと思ってしまうのは、とりあえず目下己の身の安全を確保するためと、何だかんだこの男には『一生チビチビタカられる』程の借りがあるのと―――…あとは結局、惚れた弱みか。 自分も存外、近藤のことを言えないかもしれないと胸中で自嘲していれば、しかし慣れない受話器の向こうで、男がううん、と懊悩するような声がした。 てっきり諸手を挙げて喜ぶだろうと思っていた相手の反応に、土方は訝しげに眉根を潜めた。 「なんか文句あんのかテメー。ああ、心配しなくても、万年貧乏のテメーから利子毟り取ろうなんざ思っちゃいねぇから安心しろ」 ハッと口の端を吊り上げそう告げれば、あー、だの、いやそうじゃなくて、だのと尚も躊躇うような声が聞こえてきて。 『……俺の口座に、お前が金振り込むとかさぁ。なんかあれじゃね?夫婦っぽいっつーか、結婚してるみて』 ガチャン!!と、続く男の台詞を最後まで聞くことなく、土方は反射的に受話器を本体へ押し付けた。余りに勢いよく叩きつけたせいで、掌が痺れて痛い。だが今は、そんなことよりも。 「……な……な、なっ……ふ、ふふっ……けっ…!?」 最後に寄越されたとんでもない単語が鼓膜の中で反響し、脳内でぐるぐる回る。必死に抑えていたソレが、堰を切って溢れ出し、先刻の比でなく顔が熱くなる。心臓は飛び跳ねすぎて今にも爆発せんばかりだ。 その視線が机の上の通帳に落ちた途端カアッと一層頭に血が上り、慌てて顔を上げた瞬間、うっかり窓に映った自分の―――…否、『坂田銀時』の赤面した顔を見てしまい、土方はとうとう机に縋るようにしてその場に突っ伏した。 「………………ちくしょう」 馬鹿な欲出して、入れ替わり生活なんざ提案するんじゃなかった、と低く呻く土方は、しかし知る由もなかった。 このとき屯所で、『土方十四郎』がやはり顔を真っ赤に染め、書斎机に突っ伏し呻いていたことを。 -------------------------------------- 通帳のくだりをどうしても書きたかっただけでしたすみません結婚しろ。 PR COMMENTS初めまして!最近通販サイトさんからこちらを見つけ、通わせて頂いております!
こんな素敵な銀土サイト様があったとは・・・>< (銀魂、てか銀土にはまったのが去年の秋なので・・・) まだ拝見させて頂いた小説は少しなのですが、悶えさせてもらってます・・・^^ 自分の萌えを吐き出して去る無礼をお許し下さい。 ・・・私は銀さんは天人だと思ってます。 地球生まれ地球育ちの天人。両親も白髪。 てか、その星は白髪が普通。 天パは母方のお祖父ちゃん譲り。 こんな設定を考えている自分痛いですが、ないものは自ら生産っ! は、腐の基本ですよねっ! 最初はトウシロちゃんの母親が天人で、地球人と天人のハーフ萌える・・・だったんですけど。 母親は奴隷船にいた天人で、的な^^; そしてそんな母ちゃんに当時、恋をしていたお偉いさんの天人に「あの人の面影が・・」みたいな感じで うんぬんかんぬん・・・。 ・・・失礼致しました・・・ オンリーに向けて、おこずかい貯めてます^^ COMMENT FORM |
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