MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 【Beautiful world】【パンプキンシザーズ】 見渡す限りの視界を占めるのは、どこまでも続く色のない瓦礫の荒野。 季節が変わっても、考えることは気温や気候の寒暖が装備や行軍に及ぼす影響だけで、年が明けても、銃声が途切れるわけじゃなく人を殺さないわけじゃなく。そしてそのことに不満を覚えることすらないまま、自分はきっとこうして生きて死んでいくのだろうと。 ただ漠然と、そう思っていた。 吐く息に白いものが混じり始めた12月も初めのある日、いつものように出勤したランデル=オーランド伍長は、部署の入り口に足を踏み込みかけた瞬間目に飛び込んできた光景に、軍人らしからぬ風情でポカンとその場に立ち尽くした。 「…………えーっと…………」 一瞬の沈黙の後、ランデルは半ば反射的に背を逸らし、頭上に掲げられたプレートを確認する。だが、そこに映る万聖節の南瓜とそれを刳り貫く鋏を模した特長的な隊章は、ここが紛れもなく自身の職場であると告げていた。 まだ大した仕事の役には立てていないけれど、最近ようやく馴染んできたと思えるようになった、戦災復興部隊という名の優しく暖かい、場所。現に室内へと戻した視線の先では、見慣れた隊の面々が、自分の姿に気付くことなくせっせと大きなモミの木の飾り付けを行っている。 そう、部屋の隅のスペースに突如として出現した、大きな鉢植えから生えた己の背丈より尚高い深緑色の物体は、どう見繕っても室内には似つかわしくない『木』だった。昨日退室したときまでは確かに存在しなかったはずのそれは、ただその場にあるだけでなく、脚立まで持ち出してきた上司達の手によって、やたらとデコレーション過多な物体へと変化させられている。枝という枝にこれでもかと吊り下げられた、金銀を模した星やボール、鐘にガラスの人形といったものが室内灯に反射して煌く様は、はっきり言って目に痛い。 と、 「うわっ!?」 一体何がどうなっているのだろうと立ち尽くしていたランデルの臀部に、突然鈍い衝撃が加えられ、完全に油断していたランデルは思わず数歩蹈鞴を踏んだ。慌てて振り向いた先にあったのは、片足を上げたまま大きなダンボールを器用に抱えた上官の姿。 「何やってんだお前?ンなとこ突っ立って、出入り口塞いでんじゃねーよ」 「あ、す…すみません」 尉官らしからぬフランクな口調で、自分より頭二つ分近く大きな部下を呆れたように見上げながらするりと室内に入り込んだオレルド准尉の言葉に、遅ればせながら自分の身体が障害物となっていたことに気付いたランデルが慌てて頭を下げる。同時に、そこでようやくモミの木から意識が逸れたらしい面々も、ランデルの姿を認めて破顔した。 「おはようごさいます伍長さん!見てくださいコレッ、凄いでしょ?今朝一番に業者の人が届けてくれたんですよっ」 「はぁ……」 無粋な軍服に身を包みながらも、年相応に頬を紅潮させ嬉しげに両手を広げて自慢するステッキン曹長の言葉にも、状況の掴めないランデルは曖昧な相槌を返すしか出来ない。助けを求めるように白服の小隊長へちらと視線を投げかければ、トナカイの人形を手にしたアリス=L=マルヴィン少尉は、今思い出したかのようにああ、と頷いた。 「そういえばお前は初めてだったか。いや、この時期は毎年、近くの孤児院や施設にモミの木を寄付していてな。と言っても、三課の予算からの捻出だから、そう大したものではないのだが……」 「でも、この不況の折にそんな大量発注するウチは業者にとっちゃ結構なお得意さんらしくってね。こうしていつも、やたらと豪勢なのを一本、無料で届けてくれるんだよ。まぁ、軍相手だから恩売っとこうってのもあるだろうけど」 アリスの科白を引き継いで苦笑したマーチス准尉の説明に、ようやく事情を飲み込めてきたランデルも成る程、と納得した。 帝都の荒廃と貧窮は、今更誰に説明して貰う必要もない程明らかだ。無論、金も食料もある所には有り余っているのだろうが、大多数の人間は今、停戦後の困窮に喘いでいる。ましてそれが身寄りのない子供を集めた孤児院ともなれば、政府から多少なりの援助はあれ、その日のパンとスープを手に入れるのがやっとで、とてもではないがクリスマスを祝う余裕などありはしないのだろう。 そんな子供達にせめてものプレゼントをというその行為が、誰の発案であるかなどとは分かり切っていて、ランデルは自然と頬が緩んでゆくのを感じていた。本当にこの場所は、真っ直ぐで一所懸命で、暖かい。本当に自分がいてもいいのだろうかと、時折躊躇いすら感じてしまうほどに。 一瞬胸に去来した、黒い染みのようなその思いにランデルが僅かに俯いたとき、マーチスがそういえば、と首を巡らせた。 「オレルド、あれ見つかった?」 「おおよ。聞いて驚け、なんと中庭の第二倉庫に押し込まれてやがった。おいチビッコ、やっぱテメェが年末に中身も確かめず片付けやがったんだろ」 「ひ、冷え布ですよぅっ!オレルドさんこそ、自分で片付けて忘れてるんじゃないですか!?」 「それを言うならぬ・れ・ぎ・ぬ・だっ!大体、俺はそんな痴呆症じゃねェ!」 「キャーーッ!いたたた痛い痛い痛いですぅぅぅっ!!」 「ま、まぁまぁオレルド、相手は女の子なんだからもう少し穏便に……」 部下の首に腕を回し、こめかみをぐりぐりと拳で抉る同僚を、マーチスが控えめに止めにかかる。そんな漫才のような光景に、彼らの小隊長は呆れを隠さず溜息をついた。 「全く……いい加減にしろ貴様ら。あと十分で始業時刻だろうが」 言いながら、アリスはデスクの上に置かれたダンボールを乱雑に開く。好奇心に釣られてランデルがそっと覗き込んだその中には、ツリーの仕上げとも言える色取り取りのリボンやモール、雪を模した綿と共に、自身の顔ほどもありそうな一際大きな金色の星が収まっていた。世事に疎いランデルでも、モミの木の頂点につけるのだろうと流石に分かる。 室内灯の灯りを受けて眩いほどに輝くそれを見るともなしに眺めていると、白い手袋を嵌めた小さな手が、唐突にその星を掴んでランデルへと差し出した。 「え?」 「お前がつけろ。そのガタイなら不安定な脚立も使わずに済むし、それに―――…」 アリスはそこで一旦言葉を切ると、まだ少女のあどけなさを残した口唇を僅かに綻ばせ、 「クリスマスツリーの飾りつけは、みなでするものだ」 そう言って、ぐい、と星の飾りを部下の胸元に押し付けた。まるでそれが、当たり前のことであるかのように。自分がここにいるのが、決まりきった当然のことであるかのように。 「あ……」 おずおずと、星飾りに手を伸ばす。受け取ったそれは、醜い傷跡に覆われた手の中に在っても尚変わりなく輝いていて、よく分からないけれど、ランデルにはそれがどうしようもなく特別なことのように思えた。 「え、えぇと……」 上司の無言の催促に、そっと腕を伸ばし、ともすれば震えそうになる指で、飾りの後ろに誂えられた針金を一番高い枝に括り付ける。銃の扱いに慣れた指先は決して不器用ではないはずだが、そんなことをするのはランデルにとって初めてで、柔らかい枝に不釣合いな重い飾りを固定することが中々できない。けれど、そんな部下の不手際を叱責する声はどこからも上がらなかった。 結局、腕のだるさと焦りに悪戦苦闘しながらもどうにかランデルが飾り付けを形にすることが出来たのは、始業開始のベルが鳴ったのと同時だった。 「やっぱり、てっぺんのお星様があると全然違いますね!そんでもって、一気にクリスマスって感じです!」 「リボンとモールは昼休みだな。つか、お前は万年お祭り気分だろうがよ」 「……もー、だからやめなって」 ほぼ完成したツリーを満足げに眺めつつ、それぞれのデスクへと散ってゆく同僚達を尻目に、ランデルはいつまでもそのツリーに見入っていた。否、正確には驚いていた。 だって、確かにたった今まで、それは自分にとって目に痛いほど眩い、単なる装飾過多の常緑樹に過ぎなかったはずなのに。これまでの人生で、同じようなものを目にしても、それ以外の感想を覚えたことなどなかったはずなのに。 「どうした、伍長?」 「いえ……」 これは、何と言うのだろう。この感情は、何と言うのだろう。 「綺麗だなと、思って」 そのときふいに口を突いて出た言葉に、ランデルはああ、と気が付いた。金銀の星にボール、鐘にガラスの人形や手作りと思しきサンタクロース、そして自分がつけた頂点の星。それらが目に痛い程煌く様は、綺麗というものだったのか、と。 若い小隊長は、唐突な部下の言葉に暫しの間目を丸くしていたようだったが、しかしやがて、いつも上官然とした彼女には珍しく、ふわりとした柔らかい笑顔を浮かべた。 「そうか、良かったな」 自分を見上げるその紺碧の双眸はもっと綺麗だと、ランデルは思った。 -------------------------------------------------- パソコンを整理してたら出てきた南瓜鋏SS。 日付を見るに4年前ぐらいに書いた模様。が、今読んでも余り違和感感じない辺り、管理人の進歩のなさが伺える一品です。 可愛い系の絵柄とエグい心理描写のギャップが大好きです南瓜鋏。 PR こいぶみ【銀魂】 ふと見上げた月がとっても綺麗だったので、つい筆なんて取ってみました。あ、作文じゃありませんよ、手紙です手紙。 ええと、それで、何を書くつもりだったっけ。常日頃言いたいことは色々あったはずなんですが、いざこうして畏まると出てこないものですね。 あまり局長を甘やかしすぎないように。沖田隊長に引っ張りまわされないように。万事屋の旦那とはもっと仲良く大人の対応を。あ、あと、俺がいないからって、そこらの連中に当り散らすのはやめて下さい。戻ったときにとばっちり食らうの俺なんですから。 それから、それから―――…あれ、なんだったかな。もっと色々書きたいことあったはずなんですけれど。ていうかなんかコレ、まるでお母さんみたいというか古女房みたいというか……うわ、ぞっとしないやめようやめようこれ以上考えるのは。 ああ、それにしても今夜は月が綺麗です。どこかで梅が咲いてるんですかね、とてもいい香りがして、頬に当たる風も随分と暖かくなりました。もうじき桜も咲くでしょう。そうしたら、ねぇ、またみんなで花見でも行きましょうか。 貴方がいて、皆がいて、笑っていたら、それはきっととても楽しい。と思うんです。幸せだと、思うんです。 月が、綺麗です。綺麗ですね。
―――…夏目漱石 |
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