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MEMOMEMO

短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。

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2025/04/30 (Wed) -

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フェイク

2009/08/16 (Sun) - 未選択



【銀魂】



 それは、よく晴れた5月のとある昼下がりのことだった。

いつものように街を歩いていたとき、ふと視界に映り込んだ気に入らない男の姿。
その視線が自分を捉えれば、毎度の下らない罵詈雑言の応酬から、殴り合いに発展することは容易に予想がついた。
無論負けるつもりは毛頭ないが、しかし何となく今日はそんな喧嘩をしたい気分でもなかったので、見つからないうちに方向転換をしようとして。
けれどもその時、その男が右手に持っているものに気がついて、返しかけた踵を思わず止めた。

―――…その手に握られていたのは、一輪の赤いカーネーション。

控えめに言って、似合わないにも程がある。
一瞬、どこかの女にでもやるのかと好奇心が頭をもたげたが、しかしそれにしては、花を眺めながら歩く男の表情はどこか沈んでいるようで。
そこでようやく思い出した、今日が何の日かということを。
そして、向こうの通りで、なにがしかのキャンペーンと称し通行人にカーネーションを配っていた集団がいたことを。
そう、今日は確か、『母の日』だ。
自分の故郷にはそんな風習などなかったし、何より感謝を向けるべき母親もとうにない。
そして今さらそんなことで分かりやすい感傷に浸って周囲の同情を買おうと思うほど子供でもないので、この日は自分にとって何でもないただの日曜日だったのだが、どうやらあの男にとっては違うらしい。
普段ドエスを気取っているくせ、情けないことだと鼻で笑った。
あの男の生い立ちや家庭環境など知るはずもないし、近くに肉親がいるなどという話は聞いたことがない。だが、半ば強引に渡されたのだろうその花を見やる男の眼差しを見れば、ある程度の予想はつく。
しかし、やはり情けない。自分の記憶が確かなら、あの男は自分より幾つか年上ではなかっただろうか。
そんないい年をした男が、母の日にカーネーションを片手に項垂れているなんて、情けないにも程がある。
 何をそんな、似合わない顔をしているのだ。自分の存在に気付きもしないで。
そう思ったら何だか無性に腹が立った。
腹が立ったので予定を変更し、雑踏に消えかかる男の背中を追いかけて。

後ろから思い切り、蹴飛ばした。

「い、ってぇな何しやがんでィ!?」
「お前こそ何似合わないモノ持ってるアルか税金ドロボウ」

 ああ全く腹が立つ。どうして自分がこんな男の為に時間を取らなければならないのか。今日はこれから、家に戻ってドラマの再放送を見る予定だったのに。
 けれど、仕方ない。だってマミーが言っていた。男はいつまで経っても甘ったれのコドモだと。だから。
「その手に持ってるものさっさとワタシに寄越すヨロシ。お前にはベラドンナ辺りがお似合いネ」
 
 だから、仕方がないから今日だけは自分がオトナになってやろうと胸を逸らして手を差し出せば、男が鳶色の瞳を驚いたようにまん丸に見開いて。
 そうしてやおら、かっとその頬を赤く染めたものだから、神楽はしてやったりとばかりに得意気に鼻を鳴らしてやった。

 ほらやっぱり、マミーの言った通りだ。男なんて、いくつになってもてんでガキ。



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母親代わり=ミツバ姉さん。そんな感じで。
本誌で沖神やってくれた記念の勢いで書いてみました。
ぐちり屋のようなフェイク話が大好きです。
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文章修行家さんに40の短文描写お題 4

2009/03/25 (Wed) - 未選択

4 旅

「じゃあね銀時、行ってくるよ」
直に帰ってくるからと、あの人はいつものように笑いながら頭を撫でた。
帰りの切符を、そこへ置き忘れたままで。

文章修行家さんに40の短文描写お題 3

2009/03/08 (Sun) - 未選択

3 卒業

「ときに銀時、お主そろそろ卒業する予定はないのか?」
「……一応聞くけど、今のお前のバイト先って」
「うむ、葬儀屋だ」
 で、人生の卒業式は何時だと真面目に抜かす旧友を、警察に突き出したいと本気で思った。

文章修行家さんに40の短文描写お題 2

2009/03/07 (Sat) - 未選択

2 嘘

「愛してますお妙さん!貴方のためならこの命とて惜しくない!」
「まぁ嬉しい、じゃあ早速生命保険の手続きをしないとね」
 嘘ばっかり。
 貴方は絶対、私のためには死ねないくせに。

文章修業家さんに40の短文描写お題 1

2009/03/04 (Wed) - 未選択

1 告白

「結婚を前提に付き合ってくれ」
珍妙な顔をした男の手から、食いかけの団子がボトリと落ちる。
しまった緊張しすぎて間違えた。

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