MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 フェアリーサブ土タイトルから察して下さいすみません。
※本誌ネタ含みますので味読の方はご注意下さい。 「おいこらてめえええっ!!どういうつもりだこりゃあ!!」 「ベッドの上で大声を上げるなどはしたないですよ土方さん。エリートたるもの、いついかなる状況でも常に冷静さと知性を保持し、エリートにふさわしく紳士でいなければ。まぁ、所詮元は雑種のゴロツキ風情だった貴方に、我々と同じエリートレベルを求めるのも酷かもしれませんが」 「……昨今のエリートってのは、人にいきなりヤク嗅がせて服ひっぺがして手錠で括り付けるもんなのか?ああ?」 「装備と行動に一片のムダがない辺りまさにエリートでしょう。我々の制服と同じく、対象の捕縛要領もエコの時代に即してスマートに、エリートに。市民の味方見廻り組、よろしくネ」 「ッ通訳ううううっ!!おい誰かメール依存症で現実と虚構の境界線があやふやになってて友達いねェ腐れエリート様のお言葉訳せる奴連れてこおおおいっ!!」 「ムダですよ。この特別室は基本完全防音ですし、その上今はこのフロアごと人払いしてますから」 どれだけ叫んでも喚いても誰も来ません、と、簡素な入院着姿のまま自分にのしかかり、さらりと告げた男の言葉に、土方は一瞬瞳を見開いて。 そして次の瞬間、その双眸をす、と眇めた。 普段、散々ドエス王子にろくでもない目に合わされているせいでつい突っ込んでしまったが、よく考えればこの男相手にそんな馬鹿なやりとりをしてやる義理はない。というか、やや冷静になってみれば、この状況は純粋にただ腹が立つだけだった。 「……おい、冗談にしちゃ手が込み過ぎてて笑えねェぜエリートさんよ。こちとら、優雅に入院中のてめぇと違って、こないだの後始末で忙しいんだ。三秒以内に手錠外してそこをどけ」 先刻までと異なる、低く呻るようなその声音には、本気の怒りが滲んでいた。ベッドサイドのパイプに繋がれた手錠の鎖が、土方の内心を表すようにギチ、と軋む。 土方が、要約すれば『愚弟の件で話したいことがあるので一人で病室まで来てほしい』という、とんでもなく長く意味不明かつ無性にいらっとするメールを受信したのは、近藤と共にここへ『見舞い』に訪れた三日後の、昨夜のことだった。 アドレスは消去したはずなのになんで知ってんだとか、なんでこんな性格になってんだとか、つーかとにかく返信早ぇだとか、ツッコミどころは満載だったが、しかし鉄のことで、と言われてしまえば、それを単なる迷惑メールだと削除することは出来なかった。 弟を餌にした挙句見殺しにしようとした男が今更何をと思いはしたが、毎日鍛錬に精を出す鉄の姿を見ているだけに、胡散臭いとは思いながらもやはりどうしても無碍にはできず、外回りに行くと近藤を誤魔化し一人佐々木の病室を訪れた。 銀時が知ったら、またお前は学習能力がないだとか危機感が薄いだとかぎゃあぎゃあ喚かれるに違いないが、流石に政権交代間近というこの時期、見廻り組の局長が自分の病室で暗殺的な真似をやらかしたりはしないだろうと思ったのだ。 結果、ベッドに近づいた途端隠し持っていたスプレー状の霧のようなものを顔面に噴射され、あっさり意識を失って。次に気づいたときには、何故か制服の上半身は剥ぎ取られ、両手は自らの手錠によってベッドサイドのパイプに繋がれ、圧し掛かられて見下ろされ、冒頭に戻るという経緯だった。 結論から言うと、完全に学習能力がなく、危機感が薄かった。 脳内で、三頭身の身体に羽を生やした天パフェアリーが、ほら見ろおおおおおっ!!と絶叫している。 やかましい、俺はお前らドエス族と違ってごく一般的な常識人なんだと胸中で反論する土方を、佐々木の三白眼がじ、と見下ろしていた。無論、どく気配も手錠を外すそぶりもない。 下ろした髪の間から覗く、研究者と爬虫類を足して割ったような感情の読めないその瞳に、刹那ゾクリと不気味な悪寒が這い上がった。 殺気、ではない。だが、それよりもっと粘質で、底の見えない悪意のようなものが、土方の全身にじっとりと絡みつく。むき出しの背中に当たるシーツの感触が、酷く不快に感じた。 そして、そんなときの己の直感は、えてして良く当たるのだと、土方は知っている。 「そんな怖い顔をしないで下さいよ土方さん。私はただ、貴方にどうしても確かめたいことがあるだけです」 「……はっ、鉄のことか?生憎、てめぇの大事な愚弟殿なら、日に日にウチの」 「土方さんは、フェアリーなんですか?」 「………………あ?」 何だろう。今、何だか酷く場にそぐわない単語を、聞いた気がする。 聞き間違いだろうかと、思わず一瞬状況も忘れ、ぽかんと見上げた視線の先で、佐々木はしかし至って真剣―――…というかニュートラルな表情のまま、いえね、と小首を傾げて見せた。 ちっとも可愛くなんてない。むしろ全力で気持ち悪い。 だが、どれだけ蹴り飛ばしたくとも、自分の両足を割り開くように男が圧し掛かっているせいで、拘束されていない足も役には立ちそうになかった。 ただのゴロツキ風情なら、足一本でも沈めてみせるが、怪我をしているとはいえこの男相手に今の状況で勝てるとは思えない。 男の言葉も目的も読めず、胸中に沸き起こる苛立ちにギ、と奥歯をかみ締める土方とは裏腹に、佐々木は依然飄々と嘯いた。 「ほら、三日前貴方ここで仰ったじゃありませんか。肩にフェアリー、でしたっけ? 実はですねぇ……まことに恥ずかしながら、私フェアリーが何なのか、知らなかったんですよ。しかしエリートの名にかけて、この世に理解できない事があるなど看過できません。故にこの三日間、ケータイでひたすらフェアリーについて検索したのですが」 何でも、と、ムダに冗長な台詞をやっと区切った男が、入院着のポケットから携帯を取り出し、二つ折りの画面を開く。 そういえば、金持ちのエリートを気取ってるくせにそこはまだガラケーなのかと、場違いなツッコミが喉元まで競りあがったのは、多分一種の現実逃避だろう。 「フェアリーというのは、近年入ってきた外来語で、妖精、とかいう意味らしいですね。我が国に伝わる妖怪のようなものでしょうか。容姿は諸説ありますが、妖怪のように多種多様な異形ではなく、ほとんどは可愛らしい掌サイズの小人で、背中に透明な蝶のような羽が生えているとか。いや流石はトシにゃん。只者ではないと思っていましたが、人ではなかったのですね。アレですか。やっぱりマヨネーズの妖精なんですか?」 「っあ……あ、あほかああああっ!!っつーか頭イカれてんのかテメェ!!俺のどこが掌サイズだ!どこに透明な羽が生えてんだ、ああ!?」 「サイズは一般論、ですよ。中には人間と変わらないサイズもいるようですし、羽も」 種族によっては、普段はしまっておけるのでしょう?と、薄く笑った男が、携帯の電源を長押しし、枕元に放り投げる。 ピー、と耳元で鳴った電源の切れる音が、まるで心電図の停止音のように消毒液臭い部屋に響いて。 そして、このメール依存症な男が携帯を切ったという事態の異常さに土方が気づいたときには、男の右手が無防備な脇腹をすう、と撫で、背とシーツの間に滑り込んでいた。 「ヒッ!?」 怪我のせいか、元々熱が低いのか、まるで氷水に突っ込んだ直後のように冷たい掌が、左側の肩甲骨を窪みに沿ってすう、と撫でる。その、言葉では表せないほどの嫌悪感に、土方は比喩でなく全身を総毛立たせた。 少しでも男の手の感触から逃れたくて、不自由な身体を捩り、背を浮かせて仰け反らせる。しかしそれは、佐々木にとって手を自由に動かしやすくなっただけでなく、桜色の果実が慎ましく色付く胸元を淫靡に差し出す姿勢になるのだと、土方はまだ気付かなかった。 「ああ、やはりくっきりと綺麗な羽の痕、ですね。ねぇ土方さん、私本物のフェアリーって見たことないんですよ。後学の為にぜひとも羽、生やして見せて頂けませんか?一人こんなところにいると退屈で退屈で」 「っざ、け、んなっ!てめっ、まさか本気で、んな茶番のため、にっ……ッ!」 俺を呼びつけたのか、と、恥辱と屈辱に目元を赤く染めながらも、射殺さんばかりに睨み付け、手首に裂傷が疾走るのにも構わずがむしゃらに手錠を鳴らす。 本当に、愚かとしか言いようがないが、今この瞬間まで、土方は佐々木がこんなくだらない茶番を仕掛けたからには、何らかの深く、『まとも』な企みがあると思っていたのだ。 けれどこれでは。これではまるで。 「全く、本当に可愛らしいですね、土方さんは。鋭いくせに鈍くて、利口なくせにお馬鹿さんで」 常々申し上げていたじゃありませんか、と男が笑う。爬虫類染みた双眸に、獲物を捕らえた肉食獣の色が確かに混じった。 「私、貴方のファンなんですって。そんな相手のいる密室に、一人でノコノコ会いに来るものではありませんよ。それも、ちょっと愚弟を餌にしたぐらいで易々と引っかかるなんて。全く、坂田さんのご苦労が伺えますね」 「なっ!?って、てめ、なんっ……っひ、あっ!?や、めっ…さわ、んなっ……あっ!」 弓なりに反り返り、浮いた空間を利用して、佐々木の長く冷たい指が背骨の上を横切って、右の肩甲骨の付け手を擽るようにつつ、となぞる。 あの銀色の、硬いけれど暖かいそれとは全く異なる感触に、全身が嫌悪を訴え小刻みに震え、吐き気が喉元まで競り上がる。がむしゃらに暴れる手首と鉄の摩擦がぬめり、焼き鏝を押されたように痛むのに、手首の裂傷から出血したのだと気付いたが、それでも手錠は外れない。男に押さえつけられた下肢も、もう痺れて動かない。 それはまるで、磔にされた蝶の標本のようで。 「まぁ、そんな貴方だからこそ、気に入ってるんですけどね。貴方が必死に隠している綺麗な羽を、無理矢理にでも引きずり出して、撫でて、口付け、愛おしんで」 「っぐ、あああっ!?」 この手で毟り取ってやりたくなるんです、という言葉と共に、背を撫でていた佐々木の爪が、容赦なくその肌に食い込んだ。 ---------------------------- フェアリーについて本気出して考えたらこうなりました。 PR COMMENTSCOMMENT FORM |
カレンダー
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[04/21 江狐0206]
[04/10 江狐0206]
[04/25 椋]
[04/02 椋]
[03/30 椋]
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
魚類。
性別:
非公開
ブログ内検索
最古記事
(02/17)
(02/17)
(03/04)
(03/07)
(03/08) P R
OTHERS
| |