MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ただそれだけの人だった【銀魂】
攘夷時代で何となくもっさんメイン。 高杉ボッコは愛ゆえです(多分) 夜陰に紛れ、森に潜んで過ごす一夜。 天人に気付かれないよう焚き火すら起こせないため、動物を狩っても食べる術がない。ゆえに、夕餉といえば味気ない乾し飯や肉の燻製がせいぜいで。塩気ばかりが多いそれらを竹筒の水と一緒に腹へ詰めてしまえば、後はただ地面を寝床に眠るしかないのだが。 しかし、今夜は雲一つない晴天で、空には煌煌と輝く半月と零れんばかりの満天の星。宵の口というにもまだ早く、ここ数日は専ら移動ばかりだったので大して身体も疲弊していない。 春から夏へと移ろう狭間のこの季節は、雨さえ降らなければ朝夕はとても過ごし易く、頬をさらりと撫でる風が、兜から開放された髪を揺らすのが酷く心地良い。 などと色々理屈を捏ねてみたところで、とどのつまりさっさと眠ってしまうには勿体無い夜だったのだ。 故に坂本辰馬は、手近な木の幹に背を預けたまま、宵の肴として話を振ってみることにした。 「のう、おまんらの師匠じゃったっちゅう吉田松陽ゆうんは、どがいな人間やったと?」 『……は?』 余りに唐突といえば唐突なその台詞に、同じように銘々近くの木の傍で休んでいた仲間二人が、酷く胡乱げな声を上げた。ちなみに残る一人の白い毛玉はといえば、桂の右膝を枕にくかーすかーと我関せずな寝息を立てている。 装具こそつけているものの、無防備に仰向いて手足を投げ出し眠る様は、いつ敵に襲われるとも知れない戦時中とはとても思えない。どんな人間でも、我が身が危険に晒されているとなれば、自然内臓を庇うように身を縮め息を殺して眠るクセがつくものだというのに、どれだけ暢気なのか馬鹿なのか。 だが、坂本はそんな天パの片割れが嫌いではなかった。 何だかとても、幸せに見えるから。そうやって暢気に寝こけるこの男を見ていると、誰もが無意識に安堵し呆れたように笑うから。 「大人しくあやとりなぞに興じているかと思ったら、一体何だ藪から棒に。というか、何故貴様が先生のことを知りたがるのだ」 腕を組み、剣呑な眼差しで桂がじろりと睨み付ける。最も、伸ばした右足に白い毛玉を乗せた姿では、迫力もへったくれもあったものではなかったが。 「そぎゃん警戒せんでもよか、ただのちょっとした好奇心ぜよ。何せ、一癖二癖どころか癖ありすぎてこんがらがっちょるおまんらみたいなもんを三人も育てたお人じゃあ。そのくせ、有名な攘夷思想家っちゅうわけでもなさそうじゃしのう」 何かとつるむようになったこの三人が、同じ人物に師事していたのだと聞いて以来、ずっと気になっていたのだと、両手の指にかけた赤い紐を器用に潜らせながら坂本がカラカラ笑う。 使い物にならなくなった刀の提げ緒を解いて作った即席の綾取り紐は、やはり本来のものより大分太くて扱いづらかったが、その代わり絡みにくかった。これなら小さな子供でも楽しめるだろう。結構綺麗なちょうちょが出来た。 「こんがらがってんのはてめぇの頭だ馬鹿本。ただの好奇心で死んだ人間のことをあれこれ詮索するなんざ、随分無神経な真似すんじゃねぇか、あ?」 「なんじゃあ馬鹿杉、腫れモンにでも触るみたいに優しゅうしてやった方が良かったがか?そりゃあ悪いことしたのう、ヘタレ馬鹿杉」 「っん、っだとコラ誰がヘタレだ!つーか二度も馬鹿杉言ってんじゃねぇ!!」 「おんしもわしも苗字の二文字目に『か』が入っとるんじゃき、言うなら自分に跳ね返ってくるのは当然じゃろうが。そげんことも分からんき、おまんは馬鹿じゃっちゅうんじゃ。あと気が短い」 「て、めぇっ!言わせておきゃあ調子に乗りやがって!そんなに言うなら聞かせてやらぁ!最も、てめぇみてぇな頭カラの毛玉野郎にあの人の素晴らしさが理解できるたぁ思わねぇがな!!」 「おい高杉、いい加減にせぬか。というか、もう少し静かに」 「るせぇっ!!」 売り言葉に買い言葉で、勢いよく立ち上がった幼馴染を、桂が諌めようとするものの、あっさり頭に血を上らせたこの男に通じるはずもない。 馬鹿な子ほど可愛いとよく言うが、コレはその典型だと坂本は思った。この男ほど、揶揄い甲斐のある人間もそうはいない。 さてどんな話が出てくるものかと、揶揄い半分興味半分で綾取りしながら見上げた坂本の目の前で、自称黒い獣はバン、と胸に右手を当て、朗々と宣言した。 「例えるなら、時にたゆたう水の如く清らかで、時に舞い散る桜の薄紅のように見る者の心を切なく惑わせる人だった。凛と立つその姿はさながら花菖蒲のように美しく、しかし千年の齢を重ねた大樹のように何物にも揺るがず折れず、標のように其処にあり、優しい木陰を作る。だが、その内面にひとたび触れれば、静かに燃える夕焼けのような志に指を灼かれ、身を焦がす甘美な痛みに誰もが陶酔し惹かれずにはいられねぇ。あの人は暗闇を照らす、ただ一筋の希望だった……!」 どうだ分かったか、と思いの丈を熱く語り切った男が大きく息を吐き。 そして、長い、長い沈黙が、落ちた。 当事者である坂本と桂はもちろん、密集しない程度に周囲に身を潜ませているはずの他の仲間たちも、物音一つ発しない。 全てが凍りついたような世界の中、ただ一人平和に生き残った毛玉の立てる寝息だけが、やけに大きく木々の中へ木霊して。 そうして、最も早く立ち直ったのは、高杉との付き合いがおそらくこの場で一番長いだろう男だった。 「……すまん高杉。意味が分からんのだが」 「あぁ!?」 この場にいる全ての人間の主張を見事に代弁した素晴らしいその一言に、途端男がいきり立つ。 並の人間なら竦み上がるだろうその凄みにも、しかし腐れ縁の幼馴染は心底呆れきった一瞥を向けだだけだった。 「意味がわからねぇたぁどういうことだヅラ。テメェまさか、あの人のことを忘れたわけじゃあるめぇな?」 「馬鹿を言え。先生のお姿は今でも瞼の裏に焼き付いておるわ。が、今貴様が語った意味不明な人物のことなど知らん。なんだその妖精のようなイキモノは。確かにあの頃から、貴様とは見ているものが違うと思ってはいたが、よもやそこまでだったとはな……」 「俺の説明のどこが不服だ。あの人はまさに俺たちのとって一条の光だっただろうが!」 「だから表現が抽象的すぎると言っている。自己陶酔に浸りすぎて読者を忘れた小説家か貴様は。見ろ、坂本のこの顔を。ただでさえ綿花畑に生っていそうなしまりのない綿毛面が、更に間の抜けた面になってしまっておるではないか。いいか坂本、こやつの言うことなどまともに取り合うな。松陽先生という方は……そうだな、物腰柔らかで見識深く、身分に関わらず分け隔てなく、武道に優れ作法に通じ我々に武士たるものを教えて下さった、それは素晴らしい方だ」 「ちょっ、それはええが、おまん今さらっと酷いこと言わ……」 「はっ、そんなありきたりな言葉であの人を語るたぁ、てめぇも落ちたもんだなぁ。あの人の本質はそんな薄っぺらい聖人君子像なんぞじゃねぇんだよ!」 「貴様、誰よりも先生を見てきたこの俺を愚弄する気か!?というか、薄っぺらいのはお前のその頭の中身だ!あと気が短い!!」 「おーいおまんら、そろそろ……」 「おもしれぇ、やろうってのか?いいぜ、どっちがあの人を語るに相応しいか、はっきり決着つけようじゃねぇか」 「前から思っていたが、そのいちいち無駄に芝居がかった物言いはどうにかならんのか貴様。将来大分不安だぞ」 ゆらりと空気を震わせた桂が、すっくとその場に多干上がる。すれば当然、白い毛玉は結構な音を立てて固い地面へ激突したが、対極のように見えて実は同レベルな馬鹿二人は、そんなものになど最早目もくれず互いに胸倉掴み合って罵詈雑言の応酬を始めていた。 こうなれば、もう何を言っても無駄だろう。巻き込まれてとばっちりを食うのが関の山だ。 結局、吉田松陽という男がどんな人となりだったのかは、いまいち具体的に分からなかったが仕方ない。まぁきっと、珍獣に懐かれる人物だったのだろう。 そもそも自分が事の原因だということはさらりと星の彼方へ追いやって、このままこっそり逃げ出そうかと坂本が腰を上げかけたとき、その視界の端で、白い物体がもぞりと動いた。 それは言わずもがな、たった今まで一人蚊帳の外だった毛玉の塊で。 「……いてぇ、つか、うるせぇ……何してんだあいつら……」 思い切り強打したらしい後頭部を擦りながら上半身を起こした毛玉が、寝ぼけ眼で坂本へにじり寄りながら幼馴染二人を指差し、問いかけてくる。 呆れたようなその眼差しは、出来の悪い弟を持った兄のようだが、同時に自分を見上げるその表情はどこか甘えているようにも見えて。 ということは、差し詰め自分が長男なのだろうか。まぁ確かに、四人の中では一番年嵩ではあるが。 「……おい辰馬、お前またなんか余計なことやっただろ」 「あっはっはっはー」 「いやあっはっはじゃねぇし。俺の枕取ってんじゃねぇよクソ」 代わりに使わせろと毒づいた毛玉が、返事も聞かず胡坐をかいた坂本の足へごろりと頭を横たわらせる。 それは近寄ってきた時点で何となく予想できてきたことだったので、その場から逃げることを諦め、代わりに右足を伸ばしてやれば、白い毛玉は暫くの間もぞもぞうごうごしていたが、やがて収まりのいい位置を見つけたらしく、大人しくなった。 今にも閉ざされそうな赤い瞳が、頭上に張られた同じ色の紐をぼんやり見上げているのに気がついて、手早く犬の形を作ってみれば、毛玉はその眠たげな瞳をほんの僅かに煌かせた。 そうしていると、本当に年相応の大きな弟が出来たようで。ならもっと手の込んだものを作ればもっと喜ぶだろうかと、本当に兄にでもなったかのような心地で更に指を動かそうとしたとき、ぽつりと毛玉が呟いた。 「……好きだと言ってくれた人」 「んあ?」 主語のない唐突なその台詞に、意味が分からず指を止める。すれば毛玉は、作りかけの綾取り紐を眺めていた瞳を僅かに眇め、 「先生。どんな人だったっつってたろ?」 だから、好きだと言ってくれた人、と繰り返して毛玉が笑う。 懐かしそうに、幸せそうに。赤い紐で作った不完全な模様の向こうに、ここではないどこかを見るように。 「別に、立派な人格者でも思想家でも何でもなかった。ただ、ろくでもねぇ屁理屈ばっか達者で、目潰し蹴り技何でもありの喧嘩殺法で、ガキみてーな遊びがやたら上手くて、酒が好きで煙管が好きで、甘いもんはもっと好きで、花が好きで、空が好きで、世界が好きで人が好きで、生まれて初めて、俺を好きだと言ってくれた人」 ただそれだけの人だったよ、と笑いながら毛玉がそう呟いたから。 それが本当に、本当に、幸せそうなあどけない笑顔だったから。 だから辰馬は数秒の沈黙の後、完成間近だった綾取り紐から右手を抜いて、その手をぽんと毛玉に乗せた。 やや硬めで黒い自分の髪とは違う、柔らかくて細い猫毛のような銀糸のそれは、触り心地がよくて気に入っているのだが、櫛を入れていないせいで所々絡まってしまっている。 やっぱり、綾取りの紐は太めの方がいいようだ、なんて、将来何の役にも立たなさそうなことを何故だか至極真面目に考えた。 「そうか、そりゃあ……よか先生じゃったのう」 「……マダオだけどな」 自分の吐いた台詞が流石に恥ずかしくなったのか、誤魔化すようにふて腐れて寝返りを打ち、自分の腹に顔を埋めた毛玉の耳は、夜目にもはっきり分かるほど赤くなっていて。 少し向こうでは、ズラと晋助がまだ喧々囂々不毛な言い争いを続けていて。 とりあえず、今日もこうして馬鹿をやって生きていて。見上げた空は、とても綺麗に輝いていて。何故だか酷く、気分がよくて。 ああ本当に、本当に。 「―――…げにまっこと、よか夜ぜよ」 いつの間にやらすうすうと寝息を立て始めた銀色の毛玉をわしゃわしゃと撫でながら、満天の星空に向かいあっはっはっはと坂本は笑った。 -------------------- 先生、土佐弁が分かりません。 PR COMMENTSぐあぁ!初コメ失礼します!
最近度々来させて頂いてます!お忙しいながら本当に素敵な文をいつもありがとうございます! すいません、先生とかもっさんとか銀さんとか(勿論杉もヅラも)、もう激しくぐおーとツボってしまったのでまずはお礼を言わせて下さいm(_ _)m ありがとうございます!!好きだ!! …なんか、なんだろうコレ。なんだこの萌え。 紅桜ヅラの、銀さんが一番憎んでるのに発言とかに なんというかその先生と銀さんの関係性に、胃を焼かれるような衝動に駆られたりなんかして、もうじわじわしていた私でありますが、 駄目だ、トドメを刺されました。 好きです、もうコレしか言えんです。 もっさんが… 先生が… てゆうか銀さんが…!!!!! うー…、言葉に出来ないです愛がほとばしる! ロクなコメント出来なくてすいません!!とにかく愛を伝えたかったです!!これからも応援してます!!ありがとうございました!!! あわわ…!!初めまして蒼夜さま、そして申し訳ありません!
こちらにコメント下さっていることに気付かず、まさかの一カ月以上放置プレイでした……!!(土下座) 折角コメント下さいましたのに、とんだ不義理を致しました……orz 改めまして、コメント有難うございます。 あげな攘夷SSにぐああとなって頂けてすごく光栄です。 もっさんとか先生とか高杉とか、色々大変ねつ造しておりますが、少しでもお気に召していただけたならこんなに嬉しいことはありません。 これからも突発的にこのテの話がでてくるかもしれませんが、そのときはさらりと読み流して頂ければ幸いです。 ……それにしても本当すみませんでした(大汗) COMMENT FORM TRACKBACKSTRACKBACK URL |
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