MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 不忠者。戦国/BASARAでアニバサ弐9話後の捏造SS。 某赤い人ばりに滾ってガサガサ書いただけなので、本当色々すみません。 小政前提の松永×小十郎風味です。本当、色々すみません(二度目) ---------------------- 「がっ…!か、はっ……!」 腹筋と胸筋の境目、急所の一つである鳩尾へと硬い足先が食い込んだ瞬間、小十郎の喉から溢れた潰れたような呼気が、冷えた座敷牢に反響した。 それでも、無様な悲鳴だけは上げまいと歯を食い縛り、畳に爪を立てた小十郎の無防備な身体へ、更に二度、三度と容赦のない蹴りが叩き込まれる。 常人より遥かに鍛えた体躯と、身についた受身の術によって、どうにか内臓への損傷は免れているが、しかし相手は殺戮を生業とする生粋の忍。体術だけなら小十郎を軽く上回るだろう生ける刃の攻撃に、ミシリと骨の軋む音が体内から鼓膜へと伝わった。 だが、それでもこの男にしてみれば、児戯にも等しい手心を加えているのだろう。小十郎が内心そう自嘲したとき、それを見計らったかのように、もうよい、と鷹揚な声が響き、決して致命傷にはなり得ぬ暴力の嵐がぴたりと止んだ。 肺腑を攪拌されるような衝撃に、床に突っ伏したまま数度咳き込み、ゆるゆると顔を上げれば、自分を睥睨する灰色の瞳と視線が交差して、小十郎は血の味がする奥歯をギリ、とかみ締めた。 「…っま、つ…ながっ……!」 こんな風に己を見下ろしていいのは、己が傅くのは、今生ただ一人と誓っていたが故、その主以外の足元に跪いているという状況に、耐え難い屈辱と怒りが腹奥から込み上げる。 だが、小十郎が一瞬でも起き上がろうとすれば、傍らの忍によって再び無様に床へと沈められることは自明の理で。 奪った刀もすぐさま弾き飛ばされ、完全な丸腰である小十郎に出来たのは、決して屈さぬという意思を込めた射殺すような眼差しで、松永を見上げることだけだった。 そんな小十郎の視線を受けながら、松永はくつくつと愉快げに喉を震わせる。穏やかで品の良いとすら言える、しかし鼠を甚振る残酷な猫のような瞳に対する嫌悪感だけは、何度見えても慣れることが出来ない。 元より、慣れるつもりなど微塵もないが。 「気高い竜の至宝、決して屈さぬその右目をこのように見下すというのも悪くないものだな。美しい髪を乱し、口の端から血を滴らせ這い蹲った卿を、主の目の前に突き出してやれば……さて、あの若き竜は、その隻眼をどのような色に染めるであろうか」 豊臣の企むまま寝返らせるのと、果たしてどちらがより興を誘うものかと笑う男に、小十郎は再び掠れた声で下衆が、と吐き捨てた。 この男の口から、主のことが語られるだけでも御しがたい。よくもまぁ、ここまで一挙一動一言一句その全てで人の感情を逆撫で出来るものだと、いっそ感心の念すら沸いてくる。 相克とはまさにこういう間柄のことを言うのだろう、と思ったとき、俄かに外へと繋がる廊下から、小走りに駆けて来る足音が聞こえてきた。 思わずそちらへ視線を向ければ、カラクリのように突っ立っている忍の向こう、開きっぱなしの格子越しに現れたのは、伝令らしき足軽で。 「松永様、竹中様がお呼びに御座います。何でも、例の策について早急にご相談したき儀が有る由とのことで……」 何卒本殿までご足労を、と片膝をついて告げた足軽の言葉に、ピクリと小十郎の肩が跳ねる。 『例の策』などというもったいぶった言い方を、わざわざここまできて聞かせる理由はただ一つ。それが、小十郎の主に関わること故に相違ない。 松永は、その『演出』を知ってか知らずか、薄い笑みを浮かべたまま、おや、と顎を撫で付けた。 「それはそれは、折角竜の至宝を愛でていたというのに残念だ。まぁ、時間は幾らでもある。ああ、そうそう片倉君、余り早く豊臣に靡かないでくれ給えよ?枷に捕らわれた美しい卿を、出来れば今暫し眺めていたいのでね」 「っ…ま、て!」 それでは、と踵を返そうとした松永の陣羽織の裾を、小十郎は咄嗟に右手を伸ばし掴んでいた。 刹那、首筋へ真一文字に忍の小刀が当てられる。だが、冷やりとした鋼の感触を確かに感じながらも、小十郎の視線はただ松永だけを捕らえていて。 「その刀を……政宗様の刀を、置いていきやがれっ…!」 折れたとはいえ、主の誇りたる六爪の一本。それだけは奪わせはせぬと、血痰交じりにそう告げれば、振り返った松永は、右手に携えたままだった刀と、己に縋る男とを交互に見やり、聊かの意外を込めて哄笑した。 「これはこれは……てっきり何を企んでいる、と問うてくるのかと思ったら、貴殿程の人間が折れた刀にご執心かね?どうやら、慣れぬ牢暮らしで、すっかり軍師としての才を忘れてしまったと見える」 これでは、例え豊臣の軍門に下っても、果たして役に立つのかどうか、とこれ見よがしな侮蔑を投げつけられるのにも、しかし小十郎の眼差しは揺らがなかった。 無論、竹中とこの男が揃って何を企んでいるのか、気に掛からぬはずはない。 だが、盲いたに等しい牢獄に閉じ込められたこの状況において何を聞いたとて、それが政宗に伝わるわけではない。寧ろ、自分を動揺させるような情報ばかりを刷り込まれるのが関の山だ。 折れた刀を突き付け、伊達政宗は死んだと嘯いたときのように。 だから己は、何も聞かないし何も揺るがない。強く美しい、唯一無二の己の主は、右目を失ったとて決して折れはせぬと、信じられなくて何の忠臣か。政宗は必ず生きていて、そして必ず、豊臣を討つ。そう信じて疑わぬが故に、ここで下らない企みを問うことはしない。 ただ、偽りで塗り固められたこの牢獄において唯一の真実であり光である政宗の刀だけは、決して奪われるわけにはいかなかった。 それすら奪われてしまったら、自分は本当に何一つ守れなかったことになる。 首元に刃を突き付けられているにも関わらず、全身から殺気を漲らせ揺らがぬ眼差しで己を見据える小十郎の姿に、ふいに松永はその左手を動かし、くいと形の良い顎を持ち上げた。 刹那、背筋を這い上がった悪寒と屈辱感に目元を引き攣らせながらも、それを精神力で押さえつけた小十郎の態度に、松永の瞳がすう、と眇められる。まるで、酷く面白い悪戯を思いついたかのように。 「……成る程、折れたとはいえ主の刀。それを守るに命を掛けるとは、ご立派な主従愛だ」 それとも。 「豊臣の軍師にと請われている以上、何をしようと殺されることはない、と鷹を括っておるのかね?」 だとしたら、それは随分な思い上がりだ、と哄った男が、親指の腹でつう、と小十郎の唇をなぞる。 容赦なく殴打された際、歯が当たって切れた唇の部分から滲み出ていた血が、男の指によって刷かれ、紅を塗ったようにその唇を艶やかに彩った。 「例えば……そうだな。不遜にも私に触れるその右手と引き換えに、と言ったらどうするかね?城には優秀な御殿医がいるから、すぐに止血をすれば死にはしないし、豊臣において卿に求められているのは軍師としての知略だ。腕がなくとも、約定に何ら支障はない」 ああそれともと、と男が笑う。酷く面白い悪戯を思いついたかのように。 「ここで足でも開いてみるかね?色小姓に興味はないが、卿のような男を組み敷き喘がせてみるのはまた一興だ」 「っ……!」 するり、と親指の腹で頬を撫でながら告げられたその科白を脳が理解した瞬間、言いようの無い悪寒が全身を駆け巡る。 小十郎の自制心があとほんの少し細ければ、首元の刃にも構わずその手を振り払い、殴りかかっていただろう。 一方の松永は、屈辱と嫌悪に肩を震わせながらも、指一本動かすことなく耐える忠臣の姿に、いたく満足げに目を眇めた。 「……安心したまえ、冗談だ。私はこれでも卿のことを気に入っているのでね。西洋の彫刻にも似た美しい手足をもいで不具にするつもりも、このような場所で無粋に花を散らせるつもりもない」 最も、貴殿を組み敷いてみたいというのは本気だがと、親指の腹で頬を撫でながら告げた男を、射殺すようにねめつける。 雑兵程度なら、それだけで気に当てられ失神するのではないかと思える程の視線にも、しかし松永は気に入った茶器を眺めるような眼差しを向け、喉を鳴らしただけだった。 己の死すら美学の一つに過ぎないと捉えるこの男には、元より恐れという感情など存在しないのかもしれない。 「ああ、実に良い目だ。ただ造作が整っただけのガラクタではなく、誇り高き魂の器。なればこそ、卿は美しい。故に、それを我が手で壊すことに至上の悦びがあるというものよ」 せいぜい愉しませてくれたまえと笑った男が、右手に携えていた刀を無造作に放り投げたと同時に、首元へ当てられていた刃が外される。 乾いた音を立て、畳の上へ転がった刀を奪うように拾い上げる小十郎を見下ろしながら、松永は左の親指を舌で舐めた。 「ふむ……卿の血は甘くて美味だな。主の仔竜に伝えておいてやろう」 「こ、のっ…変態野郎が!」 自分の血が、この男の体内に取り込まれたと気付いた瞬間、それまで必死で抑えていた嫌悪感が全身の毛穴から噴き出して、小十郎は思わず口元を袖で拭った。 戦用にと誂えられた丈夫な籠手で乱暴に擦ったせいで、傷ついた唇が鈍い痛みを訴えたが、それよりも男の指の感触こそが、どうしようもなく不快で堪らない。 普段滅多なことでは揺るがない巌のような男が見せた、童染みたその動作に、松永は満足そうな笑いを立てた。 「それでは、また来るよ片倉君。その気概に免じて、竜の刀は六本揃うまで卿に預けておくことにしよう。何、そう遠いことではない」 せいぜい大切に守ることだと口の端を吊り上げ言い捨てた男が、忍を引き連れ牢の向こうへ消え、牢番の兵が再び扉を閉ざし錠をかける。すれば後に残されたのは全身を苛む鈍い痛みと折れた刀、それだけで。 松永の足音が遠ざかるにつれ、沸騰していた頭から、徐々に血が降りてゆく。現実と理性が、戻ってくる。 仔竜に伝えておく、と言ったからには、おそらく松永は自分を餌に政宗を挑発し誘き出す算段を立てているのだろう。そういえば、あの忍に弾き飛ばされた襟飾りが畳の上から消えている。 義、と彫られたその飾りがどういう手段で利用されるかなど、あの男の性格からすれば考えるまでもない。 そして、それを目の当たりにした瞬間、愛しい主が浮かべるだろう表情を思うだけで、心の臓が引き絞られた。 「……政宗、さま」 痛む身体を叱咤するようにゆっくりと居住まいを正し、折れた刀を正座した膝の上へと恭しく乗せる。 ひゅうぜいひゅうと、息をする度肺腑が軋むのは、肋にヒビでも入ったからか、それとも。 「斯様な生き恥を晒し、尚永さらばえるこの不忠……申し訳も、ございませぬ」 ひび割れた刃の向こう側に愛しい姿を見据えたかのように、小十郎は掠れた声で主へ詫びた。 それは、無様にかどかわされ、豊臣に捕らわれてからこちら、ずっと胸の中で繰り返していた言葉だった。 本当は、捕らわれた時点で自害するべきだと分かっている。腹は切れずとも、舌を噛み切れる程度の自由が許されている今の内に、自ら命を絶つべきだと。 自分は、伊達の軍師だ。この頭の中には、伊達軍の編成装備策略、領地内の地形から城内の見取り図まで、秘とされる大よそ全ての情報が詰まっていると言っても過言ではない。もしこれを掠め取られれば、容易く伊達は落ちるだろう。 そしてまた、自分は奥州筆頭伊達政宗の右目と呼ばれる腹心の部下でもある。戦場において、その身が豊臣方にあるというだけで、伊達軍に、そして政宗に与える心理的効果は計り知れない。 自惚れではなく、事実として小十郎はそのことを知っている。己の感情だけで、生き死にを望めるような立場ではないのだと、言われるまでもなく分かっている。 だからこそ、早く死ななければならない。 業を煮やした竹中に自白剤を施され、拷問に掛けられて軍事機密を全て奪われる前に。自害すらままならぬ姿で、伊達軍との戦の前線に人質として引き出される前に、今ここで死することこそ、主の対する忠義の証だと分かっている。事実何度、この舌を噛み切ろうとしたか知れない。 だが、出来なかった。どうしても、黄泉への旅路へ進めなかった。 死が恐ろしいわけではない。否、恐怖がないと言えば嘘になるが、いつだってその覚悟を持って戦乱の世を生きてきた。政宗の為なら、戦場で屍と成り果てることも、自ら腹を割くことにも躊躇いはない。 だが、それでも。 「政宗、さま……」 それでもたった一つだけ残った、捨てきれぬ望みだけが、小十郎を現世へと繋ぎとめていた。 生きて戻ることを、諦めたわけではない。万に一つの可能性ではあるが、生きている以上望みを捨てることはしない。 だが、軍師として判断するなら、その僅かな可能性に賭けるより、死を選んだ方が遥かに確実だ。物言わぬ骸にさえなってしまえば、それ以上利用されることはない。 優しい主は、きっと悲しむだろうが、それでも決して折れることはないだろう。今まで数多の忠臣を失い、その都度泣いて慟哭しながらも走り続けてきたように、例え右目を失っても、天の頂を上り詰めるまで、気高き竜はその歩みを止めはしないだろう。 だからこれは、軍師として家臣として、最低の裏切り行為だと分かっている。分かっていて、それでも自分は今一度。 今一度、一目だけでも。 「……今生で、お会いしとう……御座います」 折れた刀の柄を握り締め、頭を垂れる。血を吐くようなその願いが、冷えた座敷牢へと響いて消える。 口にしてしまえば、それはますます子供染みた、愚にもつかぬ愚かな願いに思われた。 だが、それでももう一度、会いたくて堪らないのだ。大切、などという言葉では到底表せぬ程思い焦がれた、己の全てとも言える竜の主に。 だって自分は、覚えていない。別れる前、最後にどんな言葉を主と交わしたか。どんな顔を、主はしていたか。 伊達の領地内と油断し、何の覚悟もしていなかったが故に、自分は何も覚えていないのだ。 だからせめて、一目でいいからまみえたい。例えそれが、戦場の只中であろうとも。戒められ、首筋に刀を這わされた無様極まりない姿であろうとも、もう一度政宗の顔が見たかった。小十郎と己を呼ぶ声が、聞きたかった。 たとえそのために、主の目の前でこの首が落とされようとも、どれだけの傷を背負わせようとも、今一度だけ、などと。 そんなことを考え、主の身を危険に晒し続けている己には、最早家臣たる資格などないのだろう。 肩を震わせ、折れた刃に額を押し当てる。これは裏切りだ。酷い、酷い裏切りだ。 悲しませると分かっていて、苦しませると分かっていて、その御身すら危うくさせるかもしれないと分かっていて、それでも自分は、忠義のために死を選べない。 故に、カチカチカチと鍔鳴りの音を立てる主の刀に、ただただ願う。 このような不忠者をどうか、どうか。 「っどうか、お赦し下さいますな……!」 政宗様、と。 小十郎の声無き慟哭が、冷えた座敷牢に木霊し、消えた。 ------------------ 双竜は受×受だと気がついた第9話でした。新たな扉が開きましたすみません変態おじさまグッジョブすぎますはぁはぁはぁ。 ところで、切る切る詐欺常習者の小十郎さんが今回頑張ってるのは……やっぱり、プレイに付き合ってくれる相手がいないから、でいいんでしょうか。無事ご主人さまのところに戻ったら、思う存分プレイして下さい小十郎さん。 あと、おじさまが小十郎さんをどう呼んでるのかが分かりません先生。 PR COMMENTS無題さかなさん こんばんは!
レスも何にもいりません。 ただ一言言わせて下さい。 大好きですっっっ!!! オンもオフも好きなようにやればいいじゃない! 書きたいもの書けばいいじゃない! 更新遅れたっていいじゃない! 私はそれをこっそり読ませてもらって、ニマニマしたいんです!! だから銀土書き続けて下さい! さかなさんがシーラカンスに退化してしまったら、私は母なる海になりますからね(笑) 誹謗中傷(?)に負けないで下さい、なんなら一緒に潜ります(←?) とにかく 早く風邪を治して、寒い冬を乗り越えましょう♪ あ、一言じゃなくなってしまいましたね、すみません。 しかもこんな場違いなところから本当すみません。 とにかくお伝えしたかったので! ねこより愛をこめて はじめまして。こっそりひっそり応援しています。中傷や脅しもあると思いますが、そのようなことをする尻の穴が小さいに人間には負けないでください(笑) 応援しています。 COMMENT FORM TRACKBACKSTRACKBACK URL |
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