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土下座にまつわるエトセトラ

2012/07/09 (Mon) - 未選択

本誌!かーらーのー、安定銀土妄想。
32号のネタバレ若干含みますのでご注意下さい。




 頼む、と。

 慌しく警備体勢を敷いていた屯所へ突然乱入し、中庭に這い蹲って地面に額を擦り付け土下座した男の姿を目の当たりにした瞬間、土方の胸中に込み上げたのは、その義侠心に対する感動でも、頭一つ下げれば懐柔できると思われたのだという怒りでもなく。

 目の前の光景とほぼ完璧に一致する、数ヶ月前の忌々しい記憶だった。



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「んじゃ、ちょっくら行ってきまさァ近藤さん」
「ああ、気をつけてな。言っておくがくれぐれも」
「銀河剣聖とはやりあうな、でしょう?分かってまさァ。ま、本音を言えば一度やり合ってみてェもんですが、今回は旦那の土下座写真に免じて、堪えてやりやす」
「……あの、後からそれ使って脅そうとかしないでね?最近結構忘れかけてるけど、俺達一応警察だからね?」
「ってちょっと待てええええっ!!何さらっとあっさり梅酒のようにあのクソ天パの要望に答えようとしてやがんだてめーらあああっ!!」
 嵐のように現れた銀色の男が立ち去り、思わず呆然と立ち尽くしていた僅かな間に、自分を差し置きサクサク話を進め始めた上司と部下のやり取りに、土方はハタと我に戻り盛大に突っ込んだ。
 冗談ではない。事は一剣士同士の決闘などという小さな話ではなく、地球が滅びるか否かというそれこそスターウォーズ級の大事なのだ。たかが―――…そう、たかが土下座一つで、情に流される理屈などない。
 第一、あの男の土下座、なんて、そんなもの。
「いやしかしトシ、あの銀時が俺達にああまでして頼んだんだ!その義に応えずして何の漢か、何の同門か!っていうかぶっちゃけ、あんな人外魔境のスターウォーズとか相手にしたくないし万が一にもうっかり倒してお妙さんに嫌われたくない!!」
「アンタいつからあのマダオと同門になりやがったあああっ!!っていうか明らかに後半の更に後ろのヤツが本音だろーが!!ってオイ総悟おおおおおっ!!てめ何勝手に出動準備かけてんだ待てやコラ!!」
「まぁいいじゃありやせんか。どうせ旦那のことですし、最後はジャンプの主人公らしくなんか上手く纏めてくれるでしょうや」
「いいわけあるかあああっ!!てめーら自分の立ち位置分かってんのか!!こんな公私混同が上に知れたらどうなると思ってやがる!!」
 余りにも危機感と使命感が薄すぎる上司部下に、青筋立ててがなり立てる。だが、栗色の部下はビクとも動じた様子なく、右手に持っていた携帯をパチンと閉じた。
「っていうか、アンタこそ何意固地になってんでィ。一般市民の保護もれっきとした警察の本分ですぜィ?ま、あの怪力チャイナやゴリラの姉御が一般市民の枠に入るかどうかは甚だ疑問ですが、そこは旦那の激レア土下座に免じてってことで」
「あっ―――…!!」
 あいつの土下座なんぞ珍しくも何ともねぇ、と叫びかけた言葉を、土方はすんでのところで押し留め、飲み込んだ。
 近藤はともかく、このやたらと鼻が利くドエス王子にそんなことを言おうものなら、何を勘繰られるか分かったものではない。
 その脳裏に、思い出したくもない記憶が嫌が応でも蘇る。
 遡ること数ヶ月前、鉢合わせた居酒屋で飲み比べ、互いにへべれけになって歩いていたとき。
 たまたま通りかかったラブホテルの前で突然、『そういや最近風俗行く金もなくてめっきりご無沙汰でチンコ爆発しそうなんで突っ込ませて下さい!!』と自分に向かいのたまった、最低にも最低な男の、さっきとそっくりな土下座姿が。
「そうそう、何せあの銀時が土下座までしてみせたんだ。ありゃあよっぽどの覚悟だったに違ぇねぇ。お前だって本当はそう思ってるんだろ?トシ」
「いや、違っ……!!」
「ケッ、どうせ最後は率先して旦那の肩持つくせして、いちいち形だけ面倒臭ェ真似しねぇで下せェ土方コノヤロー。あーあ、これだからツンデレは。ウゼーから死ね」
「誰が誰の肩持ったツンデレだあああああっ!!行かねえっ!俺は絶対ェ行かねえからな!!誰がっ……誰があんなマダオ野郎の土下座一つで絆されるかああああっ!!」

 そうだ、認めない。あの男の土下座が、そんな貴重で価値のあるものなんて絶対に認めない。
 あのマダオのこと、土下座なんて家賃滞納したりツケが利かなくなったりしたときに、散々やっているに決まっている。ジャンプ主人公のくせに必殺技の一つもないと思っていたが、きっとあれがあの男の必殺技なのだ。全くもって、似合いすぎる。
 だから、酔った勢いで性欲処理の相手にしたかっただけの自分に対しても、あんな風に軽々しく土下座できたに決まっている。
 そうでなければ、そう思わなければ。あんな最低な男の土下座に、それでもうっかり惚れた弱みで絆されて関係を持ってしまった自分の立場は、立ち位置は、どうなるのだ。自分なんかに土下座した、その意味はどうなるのだ。
 だからそう、あんな男の土下座に、意味を求めてはならない。あのとき、酔っていたにしてはいやにしっかり土下座した男が、地面を見つめながらどんな顔をしていたのかなんて、考えてはならない。
 ホテルに連れ込むため、呆然と立ち尽くす自分の腕を鷲掴んだ男の土で汚れた掌が、汗ばんで少し震えていたことなんて、思い出してはならない。
 そんな馬鹿みたいに都合のいい可能性を、ちらとでも考えてはならない。


 
 そう己に言い聞かせ、土方は激しく脈打ち始めた鼓動の音をごまかすように、既に姿が見えなくなった部下を追いかけ、踵を返して駆け出した。

 



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もうほんとめんどくせぇから籍入れろよお前らって思いました(感想)
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