MEMOMEMO短文散文とかうっかり萌えた別ジャンルとか管理人の電波とかをひっそりこっそり。 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 愛してるだとか好きだとか。突発でお約束の銀⇔土。 ------------------------------ 大切で大切で、とても綺麗で愛しくて。それが、決して手の届かないガラスケースの向こう側にあると分かっていても、触れられないと知っていても、ただそこにあってくれるだけで満足だった。何者にも汚されない綺麗なそれを、ただ眺めて見守っていられれば幸せだった。ずっとそうしていられると思っていた。 だから、考えもしなかったのだ。ある日突然、それが他の誰かに奪われてしまうだなんてことは。ガラスケースの向こうから、消えてしまうなんてことは。 そうなったとき、自分が何をするかなどということは。 --------------------------- 「…………は?」 自分でも、酷く間の抜けた声だと自覚しながら、それでも銀時はぽかんと目を見開き、そう問い返すことしか出来なかった。 そのぐらい、今自分の聞いた言葉と、目の前の男とが繋がらなくて。きっと、自分が聞き間違えたか、男が言い間違えたのだと、思って。 けれど、そんな銀時の願いを鼻で笑うように、男は紫煙を吐き出しながら淡々と同じ言葉を繰り返した。 「聞こえなかったのか?俺を抱け、っつったんだ」 てめぇは金さえ払えば何だってやる万事屋だろう、と。 それはやはり、初めに聞いたのと全く同じ内容で。けれど今度は、聞き流すことはできなかった。 「……何、を」 何を、言っているのだ、この男は。 代わり映えない、いつもの一日のはずだった。 特にこれといった仕事もなく、二人と一匹の従業員はそれぞれ出掛けていて、天気も良くて。珍しく家賃も払っていたから、階下の取立てに怯えることもなく、のんびりと惰眠を貪っていた昼下がり。 そんな平和な一日をぶち壊すように、突然隊服姿で訪れた男は、こちらの都合などろくに聞きもせず我が物顔でソファに腰を下ろすたり、第一声で今の台詞を吐き捨てたのだ。 分からない。何がどうなっているのか分からない。もしかして自分は、性質の悪い夢でも見ているのではないだろうか。けれど、夢だというには目の前の男の存在は、余りにも鮮明で。 目を見開いたまま、乾いた口唇を小さく震わせるばかりの銀時に、男は―――…土方は、苛立ったように顔を顰め、短くなった煙草をアルミの灰皿へ押し付け嘆息した。 「別に揶揄ってるわけじゃねぇ、大真面目だ。っつうのも、とある有力な幕臣に、男色狂いの爺がいてな。そいつが、何を思ったかこの俺を御所望らしい。ま、豪華な料理ばっか食い飽きた人間が、ゲテモン珍味に手ぇ出してみたくなるようなもんだろう。初めは適当にあしらってたが……しかし相手は腐っても重臣だ。下手を打ってつまらん恨みを買うのは得策じゃねぇ。どうしたもんかと思ってたんだ、が」 面倒臭げに毒づいた男が、懐から新しい煙草を取り出し、慣れた動作で咥えて火をつけ、肺腑一杯に吸い込んだ毒煙をふ、と虚空へ吐き捨てる。 いつもなら、空気が汚れると突っかかっていただろうその行為にも、舌が凍りついたように言葉が出てこない。 そんな銀時の様子などまるで気付かぬかのように、土方は尚も続けた。 「そいつは逆に言や、上手く誑し込めりゃ色々上手く利用できるっつうことにも気付いてな。ま、その辺りの仔細は省くが、とにかくこの話、そう考えりゃウチにとってもそう悪いもんじゃねぇ。俺ァ野郎の話を飲んで、イロんなることにした。が、ここで一つ問題が発生してな。受けると決めたはいいが、俺ァ男色の経験もなきゃ、そのケもねぇ。幾らなんでも、それでいきなり本番に挑むのは無謀ってもんだ」 多少なり事前の予習は必要だろうと、酷く詰まらない事務仕事を説明するかのような淡々とした口調で紡ぐ男の言葉が、ガンガンと頭蓋を打ち鳴らす。 幕臣?情人?何だそれは。どういうことだ。この男は一体、何を、言って。 「つーわけで、依頼だ万事屋。これから一週間で俺の身体を『使える』ように仕込め。今のままじゃ、突っ込まれた途端相手殴り飛ばさねぇとも限らねぇ。最低でも男のブツを咥え込める程度に、後ろで感じるようになれりゃもっといい。柔らかくもねぇ、その上反応もしねぇ木偶を抱いたって、興醒めもいいところだろうからな。ヤラれ損なんざまっぴらご免だ。報酬は、前金で十万。こっちの望む成果を出せりゃ、もう十万。ホテル代その他必要経費は別途支払う。ボロイ仕事だろう?最も、てめぇが男相手に勃たねぇってんなら論外だが」 どうする?と、問うた男が、懐から取り出した茶封筒を無造作にポンとテーブルへ置く。おそらくそこには、前金だという十万が入っているのだろう。 その『依頼料』をはっきり眼前に突きつけられて、そこでようやく錆付き掛けていた銀時の思考が軋みながらも動き出す。 つまり、何か。この男は、組にとって利があるからと、変態爺の愛人になろうとしていて。しかしその為には『処女』だと何かと厄介なので、慣れさせろと。そういう、ことか。 そう、はっきりと理解した瞬間、すう、と頭から血が下がる感覚がした。 どうしてだろう。こんなとき、普通なら逆に激昂するものじゃないのか。かっと頭が熱くなって、怒りが沸騰して、ふざけるなと胸倉掴み上げてぶん殴るぐらいのことはするんじゃないのか。 だって。 だって自分は、この男に惚れているのに。ずっとずっと、好きだった、のに。 なのに、ようやく口をついて出た言葉は、自分でも驚く程酷く感情のない冷たいものだった。 「……へぇ、天下の副長さんが身売りねぇ。ゴリラの為なら、きったねぇジジイ相手にオンナ宜しく足だって開きますってか?てめぇの部下にんな真似させるたぁ、あいつも中々立派な組織人じゃねぇの」 「近藤さんは関係ねぇ。何も知らねぇ。全ては俺一人の判断だ」 どうして、こんな声が出ているんだろう。どうして、こんな冷静に話せているんだろう。 どうして、こんな残虐な感情が、胃の腑の奥からじわじわと沸いてきているのだろう。 「っは、そりゃあご立派な忠義心で。ま、お前が何しようが知ったこっちゃねぇけどさぁ、それでなんで犬猿に嫌ってたウチに来るわけ?筆おろし……じゃねぇ、開通式がしてぇなら、二丁目辺りぶらつきゃいいだろう。お前、顔だけはいいし、それこそ逆に金出してでも抱かせてくれって野郎がゴロゴロいんじゃね?」 「以前、攘夷浪士と通じてた玄人の女に、寝首かかれそうになったもんでな。以来、素性の知れねぇ相手とはヤらねぇことにしてる。まして、相手が野郎なら尚更だ。その点てめぇなら……ま、胡散臭ぇことに違いはねぇが、少なくともコトの最中に首絞めるような真似はしねぇだろ」 「そりゃ、随分信用頂いてどーも。じゃあ、俺が断ったらどうすんのお前。ゴリとか、屯所の連中にでも頼むわけ?」 まぁ男所帯だし、ソッチの趣味のヤツも多そうだけどと揶揄うように口の端を吊り上げれば、そこで初めて能面のようだった土方の表情に感情の色が乗った。 「っあいつらを侮辱すんじゃねぇっ!そんな真似するくれぇなら、潔くこのまま爺とヤってやらぁっ!」 「――――…ふぅ、ん」 可笑しかったわけではない。なのに何故か、腹の奥から笑いが込み上げてくるのを押さえられない。 侮辱。成る程確かに、今の言葉はこの男にとって最上級の侮辱だったのだろう。 けれど、それなら、この男が今自分にしていることは何だというのだろう。金を突きつけて、抱けと迫って。他の男に上手く抱かれるために、身体を使わせろと言われて。 それはつまり、役割の違いこそあれ、お前を『売れ』と言ったも同然で。 ふつふつと、酷く冷たい感情が腹底から沸いてくる。すう、と心のどこかが凍て付いてゆく。 吉原の女たちのように、春を鬻ぐ人間を見下しているわけではない。日輪然り月詠然り、自分の中に一本の筋があればそれも立派な生き方だろう。けれど。 いつの間にか惹かれていて。触れられないと分かっていても、ただ眺めているだけで幸せだった。笑ってくれているだけで嬉しかった。 そんな風に思っていた相手から、唐突に突きつけられた言葉と金は、酷い裏切りに思えて。銀時が大切に守ってきた透明なガラスを、その拳で打ち破るに余りあるものだった。 「……いいぜ」 「え……?」 す、と目を細めて告げた台詞に、いきり立っていた男が一瞬虚を突かれたように目を見開いた。自分から言い出したくせ、まるで酷く驚きショックを受けているようなその態度に、今度こそ自然と嘲笑いが込み上げてくる。 「何その顔。受けてやるって言ってんだよ、その依頼。まぁ、元々野郎なんざシュミじゃねーけど、お前見た目だけはいいし、カラダも悪くなさそうだし。何より、一度そのスカしたツラ歪めてみてぇって思ってたんだよねぇ」 くつくつと喉を鳴らしながら、テーブルに置かれた封筒を無造作に掴み上げて中身を取り出し、ソファに深く背を預けて枚数を確認する。滅多にお目にかかれない諭吉が、丁度十枚。これで暫く生活費には事欠かないだろう。 成功報酬を合わせれば二十万。つまりはそれが、自分の値段ということだ。 だったら、もういい。この男の中で、自分がたかがその程度の人間だったというのなら。この男が、誰かの物になるというのなら。いっそ。 「変態ジジイにどんなドギツいプレイされても、ガキのママゴトにしか思えねーような、最高の仕込みしてやるよ」 毎度あり、と口の端を吊り上げたまま、右手に持っていた札束をバサリと宙に放り投げる。 ヒラヒラと虚空を舞い落ちる紙切れの向こうで、大切だったはずの男が呆然と目を見開いているのにも、その顔がまるで傷ついているように見えるのにも、やはりもう何も感じなかった。 自分に怒りを感じる資格がないのは分かっている。この男は何も知らないのだから。自分がどんな思いで、届かないガラスの向こうの綺麗な存在を眺めていたかなど、何も知りはしないのだから。 だから、理不尽に怒りをぶつけるようなことはしない。ただ。 ガラスを突き破った血塗れの手で、綺麗なこの存在を、壊してしまおうと、思った。 「さぁて、ビジネスといきますか副長さん」 とっととその服脱いで跪け、と口の端を吊り上げ睥睨した銀時の足元に、虚空を舞っていた紙切れの最後の一枚が、はらりと落ちた。 ------------------------- 今週のザンプを読んで、帝王銀さんに萌え滾って書き散らかした突発ぶった切りSSでした。 原作銀さんが札束ばっさああってやったら禿げ萌えるじゃないの…!というおかしな局地的萌えですみません。特に続きはありません。 PR COMMENTS無題是非続きを!!!
泣いてしまいました土方さんの依頼内容を読んだ所から銀さんに感情移入して、段々土方さんにも……で嗚咽混じりにマジ泣きしてしまいました。さかな様神です!
無題続き楽しみにしてます(●Å´)∈
無題続きが読みたいです!
初コメです・・うわあああああああ
ここで終わりですか???? もう続き読みたくて悶えてます~ 素敵でカッコ良くて泣けて・・・ いつも萌えまくってます! 続き…こ、ここで終ってしまうのは勿体無くないですか?…いえ正直に言えば私が続きがみたいのです…
是非再考願います はじめまして。 以前より足繁くかよわせて頂いておりましたが、とうとう我慢しきれずコメントを残します。はじめまして。
銀時の言葉にしない本心に目頭が熱くなりました。土方の内心を想像するだけでもこみ上げてくるものがあり、松柳様の文章において何度目かも分からない心の揺れを感じております。 僭越ながら、今後も陰ながら応援させて頂きます。 銀土は永久に不滅です。 (^O^)あひ帝王銀さんww これは新しいですね、 てか土方なんでそんな悲しそうな顔すんねん!! てか銀さん切ないよ~ ぁぁ続き見たいです(笑) 銀魂本誌で副長がよく笑うようになりました。
これも旦那と出会ったおかげだと思いました。 山崎退 無題続きがとっても気になります…っ!ぜひ読みたいです!
無題続編希望に一万票です!!
じゃあ私も一万票で!みなさんと同じく続き読みた過ぎて初コメです!!
(いつも拝読させていただいております!) 2人が切な過ぎて泣きました! ホントは土方くんも銀さんのこと好きなくせに・・・ ホントは「馬鹿なことすんな」っていってほしかったくせに・・・! やべっ、萌えてきた~ えーっえーっ!?続きィ~無いのですか?(┳◇┳)
心の声でした。 スイマセン( ̄∀ ̄) サヨナラ~ また来ます~ こざくらインコ 読みました!!凄く泣けました(´Д`)!! どうか続きが読みたいです 横からすみません人様のブログでこういうことを言うのは失礼かと思いますが、あまりに目に余るので言わせて頂きます。催促はよくないと思います。管理人様のご都合もきちんと配慮なさって下さい。
いきなりでしゃばって発言して申し訳ありません。管理人様のお話、大好きです。 乱文、失礼しました。 無題あー愛してます好きです!!!!続き全裸待機っ
無題つ、続きが気になり過ぎます…!
もし気が向かれたら是非とも続きを書いてやってください、悶え過ぎてどうにかなりそうです… 初コメにも関わらず図々しくてすみません; ありがとうございました!先日は丁寧に教えていただき、ありがとうございました!
うわあ、まだいっぱい読み物があるぅ!と、小躍りする毎日です。 幕土←→銀、萌えます☆切ないです 続きを知りたいような気もしますが、この作品はこれで完成度マックスな気のほうが勝るので…… 号泣しながら『続きぎぼうじない(えぐっ)』に1票です(ToT) これからもご無理のないよう、ゆるゆる頑張ってください。いつでも楽しみにしています! 新刊化ありがとうございます新刊化を大変嬉しく思います。
以前気持ちの赴くまま感想を送り、続きを子供の様にせがんでしまったのではと、反省いたしました ですが、新刊として出ると分かり、大変有り難く思いました。 ありがとうございました COMMENT FORM TRACKBACKSTRACKBACK URL |
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